2013年03月26日

Grading Training その4

カラーコレクションハンドブックからの実践事項の最終回。
その1
その2
その3

今回は最後の課題、映像に"Look"を与える。

素人が最初に目をうばわれるのはやっぱりこれだと思う。
今はYoutubeの動画加工ツールやvimeo enhanceなど、web上で無料で"look"プリセットを与えられる時代になって、敷居はどんどん下がっているし、認知度も高まっていくだろう。
ただ、私が着手した頃はこんな無料ツールはない時代だったので、MagicBulletLooksを買って、いさんで「グレーディング」プリセットを使っていたわけです。
恥ずかしながらこのブログでもいろいろプリセットを試していたエントリーもあるな。
でも、数あるもののうちどれを試しても、感じるのは「どぎつさ」と、うーん、クオリティ的にはやるんじゃなかったっていう後悔。
オリジナルとの比較を動画サイトにアップしても、元の方がいいね!的なコメントをいただいてしまったり。

なんでかなって考えたときに、やはり素材とプリセットのアンマッチングだと思う。
MagicBulletLooksなんかのプリセットは、きっとLogガンマなんかの思いっきりコントラストも彩度も低い素材を特定の画調にすることを考えてつくられてるように思う。
でないと、あんなになんでもかんでもS字曲線系のコントラストになってないよ。

そもそも私が扱うのはAVCHD。
元からグレーディング無しでそのままきれいに見えるように調整された素材なわけで。
それに対してあんなどぎつい曲線のグレーディングをやっても、どこかで見た映画「風」TV「風」にはなっても、白の飛び方、黒のつぶれ方、肌の見え方のクオリティはお粗末そのものになるのはわかりきっている。
やはり重要なのは「整える」「際立たせる」「シーンの印象を統一する」のプロセスをしっかり経た上で、最適なカーブをあてることだと思う。

MojoやColorista 2と比べて、Looksには調整ツールがたくさんある。
で、その組み合わせでプリセットを提供してくれているのだが、いかんせんそれに対する説明が圧倒的に不足しているのだ。
このツールは画調の何に寄与していて、それはこの素材には必要なのか不要なのか・・・そもそもプリセット考案者はどういう順番でこのツール群をあてていったのだろう・・・
そこまでの探究心を全てのプリセット、全てのクリップについて行うことは、難しい。
さまざまな調整項目・・・宝の山を目の前にしているのだろうけど、高すぎて頂上が見えない。
とはいいつつ、なんとかプリセットの方に素材を合わせたり、簡単なところでカーブのみプリセットを触って調整してみたりしつつ、使いこなしていくしかないわけだが。

というわけで、やはりいかにStep1〜3の過程による下準備が大切かということを実感しつつ、おなじみの宮古島映像にさまざまな"Look"を施してみた。

特定の色調を与える"Look"について、画面に人物が入るか否かではっきり方向性と難しさが決まってくるように思う。
私は人肌には保守的な方なので、人物対象の方が断然難しく、いつも悩んでしまう。

Grading Training Log from "Color Correction Handbook"; Step 4-cafe from soyoharu on Vimeo.



映画シーン01 masculin

逆光_01.jpg
逆光_01_rgb.JPG
順光_01.jpg
順光_01_rgb.JPG

これはカラーコレクションハンドブックのChapter10「クリエイティブテクニック」の中で「典型的なクロスプロセスルック」として紹介されているカーブ。
01_RGB-curve.jpg
ハイライトは黄みがつよく、シャドウは青みをきかせて、中間調はその相殺効果でニュートラルな感じに出るようになっている。

masculinの名のとおり、女性が思う男性らしさ、かっこよさをイメージした。

映画シーン02 detective 70s

逆光_02.jpg
逆光_02_rgb.JPG
順光_02.jpg
順光_02_rgb.JPG

これは私が好んで使うハイライト緑、シャドウ赤の組み合わせ。
the rainy day」の前半や、「2012 thai 02」の0:53〜1:46なんかに使っている。
80年代に私が放課後再放送される刑事ものなんかのドラマを観ていたときの記憶に近い色はこんな色合いだから。本当の70年代風は知らないから、「うそだ」と言われればそれまでだけど。

02-mojo.JPG
これなんかはColoristaで作るのが一番やりやすいだろうが、mojoでもスライダーをさわっているうちになんとなくそれ風のができあがるという見本。

映画シーン03 monochrome

逆光_03.jpg
逆光_03_rgb.JPG
順光_03.jpg
順光_03_rgb.JPG

逆光の映像のベクトルスコープを見てもらうとよくわかるのだが、実際にはモノ(1色)ではなく、デュオ(2色)である。ハイライトはベージュ、シャドウはやや青紫がかっている。
RGBパレードではシャドウとハイライトの色バランスを見てもらいたい。

MagicBulletLooksのプリセット"Vintage tint"を使った。
03-looks-vintage-tint.jpg
ベージュと紫って、個人的にかなりおしゃれな色の組み合わせだと思っているので、このLooksのプリセットはお気に入りになりそうだ。

映画シーン04 warm ennui

逆光_04.jpg
逆光_04_rgb.JPG
順光_04.jpg
順光_04_rgb.JPG

これは逆光のシーンにぴったり。
白飛びした窓をごまかすのにもいい感じだった。
ただこれがハマる映像は数少ないと思われ・・・

MBLのプリセット"Warm Haze"を使った。
04-looks-warm-haze.jpg
逆光シーンと順光シーンではHaze/Flareのパラメータを変えるのが吉。
順光ではハレーションは控えめに。


反対に、風景映像なんかは割りとぽんぽんアイディアが浮かんでくる。

Grading Training Log from "Color Correction Handbook"; Step 4-road from soyoharu on Vimeo.



映画シーン01 x-process-green

宮古車窓g01.Still062.jpg
宮古車窓g01.Still062-scope.JPG

これはベクトルスコープの見方のいい勉強になりそうな例。
グラフが円の中心を通っておらず、ほぼシアン〜緑〜黄色方向に偏っている、典型的な「緑かぶり」。
プリセットはMBLの"CrossProcess Green"を使った。
GorillaGrainの35mmの09番を80%のオーバーレイでかぶせている。

映画シーン02 pointillism

宮古車窓g02.Still063.jpg
宮古車窓g02.Still063-scope.JPG

MBLの"CrossProcess Basic"を使っているのだが、特徴はその粒子感だろう。
GorillaGrainの35mmの09番を50%のリニアライトでかぶせている。
フィルムグレインの使い方だが、描画モードでだいぶ変わる。
人肌向けのソフトできれいな感じならソフトライトがおすすめ。ハイライト部分にはノイズがのらず、中間〜シャドウにかけて淡く乗る。
逆に、このリニアライトは画面全体にはっきり粒子が乗る。
それゆえ「点描画」と名づけた。

映画シーン03 monochrome

宮古車窓g03.Still063.jpg
宮古車窓g03.Still063-scope.JPG

MBLの"Black and White Crunch"
階調が一番きれいに見えるものを選んでみた。
GorillaGrainは04番を80%のハードライトで重ねている。
これもソフトライト同様ハイライト部には粒子は乗らない。

映画シーン04 Bleach Bypass

宮古車窓g04.Still063.jpg
宮古車窓g04.Still063-scope.JPG

MBLの"Bleach Bypass Warm"を使っている。
Alexis先生によるとブリーチバイパスと言うのは決して彩度が低いことではない、とあるが、MBLの場合はわりと彩度が低く出る。
GorillaGrainは04番を80%オーバーレイで重ねている。

映画シーン05 hard mix

宮古車窓g05.Still063.jpg
宮古車窓g05.Still063-scope.JPG

わお!ベクトルスコープとRGBパレードがえらいことになってます。
これは、MBLの"Super Vintage"でかなりシャドウを持ち上げて若干ハイライトを下げ、コントラストを低くしたものに、GorillaGrainの04番を35%ハードミックスで重ねている。
ハードミックスという描画モードは非常に面白くて、コミックアート風になる。
BGMもあいまって、ずばりテーマは「サイケデリック」!


今回、Step 1のcorrection、Step 2のenhance、Step 3のmatchingの過程を経たクリップに、ざっと一様に同一のプリセットをあてただけでも、けっこううまくいっていると思う。
もちろん、それだけではだめなものもあり、マスタークリップと比較しながらカーブを微調整したクリップもあるが、それは悩むほどのものでもなく、割と簡単にできた。

このプリセットの引き出しをある程度増やしていきたいと思う。
今度はピンクやブルーのハイキーな感じにも挑戦してみたいし、ハワイアン風の彩度の高いハイキーも気になる。たくさん映画を見たいなぁ。

posted by そよはっは at 21:31| Comment(1) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2013年03月13日

Grading Training その3

さて、前々回前回に引き続き、カラーコレクションハンドブックからの実践事項をメモしていく。

前回の終わりで、3回目の"作品としてのLooksを与える"に行くと予告した。
が、もう一つ書き忘れたが大事な章があった。
カラーコレクションハンドブックス Chapter8「ショットのマッチングとシーンのバランス」だ。
1つの映像を作ろうとする場合、いくつかのクリップをつなぎ合わせて作る。
が、このクリップを全て均一な画調で撮っているかというと、なかなかそんな腕は素人にはない。
あるものは露出が低すぎたりあるものはWBがおかしかったり、本来同じ肌色でつながるべき同じ登場人物なのに、カットによって描写がまったく異なってしまうこともある。
言うなれば、これはStep 1の段階で出会う問題である。
が、再び最終Stepである"Looks"の適用でも再浮上してくる問題だろう。同じエフェクトを全てにコピーしても、うまく行くクリップと行かないクリップは当然出てくる。
私も一応は前からあまりに違和感を感じるクリップについてはなんとなく他のと合わせるように補正していた。
だが、Alexis先生が1章丸々割いてこの問題に対して非常にシステマチックにこのテーマに取り組んでいるのを読んで、やはり違いはここにあるのだなぁと感心したので、急遽Step 3の内容をこちらに変更して方法をメモしておく。

今回のStep 3「クリップごとのマッチング」の学びポイント
*調整の管理
*比較は前後のクリップでなくマスタークリップと
*比較方法
*比較基準と調整の順序

【調整の管理について】
私が今までもっとも曖昧で悩んでいた部分なのだが、
A.なるべく少ないフィルタエフェクト回数で、「整える」「際立たせる」「Lookを与える」を一気にやってしまうのがよい
B.バランスを「整える」過程と「Lookを与える」過程ではフィルタを明確にわけ、別々に調整できるようにする。(重ねがけが発生)
のどちらが良いのかということ。

Aの特徴:
・比較的自然なLookの作成の場合には、この方法がシンプルで早い
・一気に作りこんでしまうので、別のLookへの変更がしにくい
Bの特徴:
・一旦ベースを作っているので、後からいろいろなLookの変更に対応できる
・時間と手間がかかる

と書かれているが、私はもう少し突っ込んでAlexis先生に聞いてみたいことがある。
Bのフィルタの重ねがけは画質へのダメージはどうなのかということ。
ベース調整の段階で露出を大幅に下げたクリップに対して、別のフィルタで再び露出を上げたLookを与えるという無駄な手順が発生した場合、問題はないのか。
一応、私のつたない検索力と理解力で調べた結果が、「32bit浮動小数点処理のソフトなら大丈夫じゃない?」という仮説だ。
http://blogs.adobe.com/VideoRoad/2010/06
Understanding Color Processing: 8-bit, 10-bit, 32-bit, and more(Jun.3 2010)
の記事によると、32bitなら、例えば露出調整で思い切り露出を上げて白飛びさせたクリップに対し、別のエフェクトをかけて再び露出を下げて戻してきた場合、白飛びではなくてもとの色が復活している。

ということは、最近某所で安物買いと若干鼻で笑われた感のあるRed Giants製品+Premiere Pro CS5の組み合わせもも、基本は32bit浮動小数点処理に対応しているので、画質的にはお高いソフトと同じことができるんじゃないの?と少し反骨精神がわいているのである。
(後述するが、ありえない製品不良もいっぱいあるし、カラーコレクションハンドブックを読んだだけでもDavinciには及ばない機能があることも知ってます。値段相応にアマチュア用であることは認めます。
 でも私プロじゃないし、別にそれでいいと思うのだ。知恵と工夫でカバー!遠吠えです。)
参考に
http://www.reduser.net/forum/showthread.php?75862-Resolve-Lite-Vs-Colourists-II

というわけで、調整の管理としては、基本B案で行こうと思う。

【マスタークリップの選定について】
・最も特徴的である
・全てのシーンの登場人物が含まれ、周囲の環境が把握できるのが理想
・お気に入りのショット(最上)を作り、それに他を合わせる形が理想だが、さまざまな問題からそうは行かない場合もある。ときには、最低を基準としなければいけない場合もある。最終的には美しさよりも一貫性。

全てのシーンについて、前後のクリップと合わせるのではなく、常にマスタークリップと比較する。
でないと伝言ゲームのように始まりと終わりで結果が微妙に違ってくることもある。
ちなみに、私は見事に伝言ゲーム派だった。反省。

【マスタークリップと個々のクリップの比較方法】
・交互に見比べる
・画面分割機能を使う
・両方のクリップのカラースコープを比較

確か以前使っていたEdiusの場合は、カラー補正エフェクトに、任意の位置にカーソルを合わせて前後左右に画面を分割して比較する機能がついていた。
だが、Colorista 2をはじめとするRed Giants製品とPremiere Pro CS5では見当たらないので、私はこんな風にしてみた。

図1. マスタークリップのフレームを書き出し
03-match-01.jpg

今回の例は、初春の梅の例。
極端なグレーディングLookではなく、GH2 Valkyrieのノスタルジック独特のやわらかいイメージを生かし、バランス調整のみで仕上げようと思った。

ハイライトとシャドウのバランスがよく、WBも、寒さに青ざめていた気持ちが春の暖かい日差しにやっとほころんでくるような、少し温かみのある色温度のものをマスタークリップとして選んだ。
他のクリップに共通する登場人物としては、梅のピンク、林や木のグレー〜ブラウン、芝生の黄緑、常緑種の葉の緑が含まれていることもその選定の一因となっている。

このクリップの1フレームを静止画として書き出し、ビンに登録する。

図2. カラー補正ワークスペースのカスタマイズ
03-match-02.jpg

Premiere Pro CS5の場合、ワークスペースを適宜切り替えて作業するのだが、マスタークリップと個々のクリップの比較は「カラー補正」ワークスペースが一番使いやすい。
図2に示したとおり、右上のタイムラインモニターには個々のクリップのコンポジット映像、右下にはそのスコープがデフォルトで表示されるようになっている。
ここにアレンジして、画面中央上のソースモニターに先ほど書き出したマスタークリップのスナップショットを表示させるのだ。
ソースモニターのメニューにもコンポジットとスコープを切り替えるボタンがついているので、適宜これを使えば、画面分割こそできないが、常にマスタークリップと目視、スコープで見比べることができる。

【比較基準と調整の順序】

1.コントラストの比較
→ハイライト同士の比較、シャドウ同士の比較、中間調同士の比較
→YC波形が頼りになる

YC波形ばかり見ていると見落としがちになるのだが、画像によっては、白が存在しないクリップもある。
それを同じ「最明部」としてマスタークリップのウェディングドレスの白と同じIRE値に引き上げてしまうのはおかしい。
ちゃんと目視で判断する必要がある。

2.カラーバランスの比較
→目視で見比べ、両映像の色調の違いが一番見られるのはハイライト?中間調?と見ていくと、たいてい違和感を感じるのはハイライトであることが多い。たいていハイライト→中間調→最後にどうしても合わない違和感がある場合のみシャドウを触る
→ベクトルスコープで中心からの角度が同じであればカラーバランスはマッチングしている
→ハイライトとシャドウのバランスにはRGBパレードがみやすい

3.彩度の比較
→目視で気づく目を持つことが大事
→ベクトルスコープでは、円の中心からの距離(グラフの全体的なサイズ)の比較によって彩度の違いがわかる。

4.例外の確認
→各クリップの中で1つだけ目立ちすぎていたり、バランスを大きく崩す原因になっているオブジェクトはないか探す。
目だっていいものなのか、目立たない方がいいものなのかを見極め、必要ならセカンダリコレクションで補正。
(鮮やかな赤、黄色、マゼンタ等)
※紹介する「the message of spring」では、朱色塗りの橋があまりに鮮やかでメインの人物と喧嘩する感じがしたので、セカンダリコレクションで彩度を下げている。

というような手順を経て完成したのがこちらのクリップ
「the message of love」

the message of spring from soyoharu on Vimeo.



次回こそ、Step 4「Looksを与える」に進む。
posted by そよはっは at 23:34| Comment(1) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2013年03月02日

Grading Training その2

前回の記事に引き続いて、カラーコレクションハンドブックを読んで勉強したことを実践したメモを記す。

1.全体的な明度・色・コントラストのバランスを補正する。
2.被写体と背景の区別をつけ、際立たせる。
3."Look"を与える
のうち、今回はStep 2の「被写体と背景の区別をつけ、際立たせる」までを行う。

Grading Training Log from "Color Correction Handbook"; Step 2 from soyoharu on Vimeo.



Step 2の学びポイントは
*被写体の彩度を判断する(ベクトルスコープ、FLATカーブの見方)
*光の強さと方向性、環境と光の色について
*セカンダリーキーとパワーマスクを組み合わせて効果的なマスキングを行う
の3点である。

クリップは全部で7個。
Step1と同じく、GH1で撮影した宮古島映像から。
今回は光の強さ、方向性がよりはっきりしていて、かつメインの被写体がわかりやすい屋内の人物映像を題材とする。

まずは、オリジナルの素材を荒編集して通して観た感想。
「木目のマホガニー色の壁の色が派手すぎて目立つ」ということ。
派手→地味というベクトルでの判断には、コントラストと彩度が寄与している。
このうち、この素材にあてはまるのは特に彩度の高さであろう。
(なぜなら、YC波形では0→100まで使い切っていて、かなり明暗差があることがわかるからだ。実際、失敗素材といっていいほど、ほとんどのクリップで強烈な白飛びが発生している。これは後に白飛びの緩和というカラーコレクションハンドブックからのTipsの実践用にあえて選択した。ということにしておこう。)

概して、GH1の特徴は、今思い返してみるとその彩度の高さだと思う。
GH2(hacked)と同じ題材を撮って比較している映像がちょうどあるので、それを例に出して、映像の彩度の判断方法を学んでいこうと思う。

図0-1.GH1とGH2の比較(実写編)
02-01-comp-gh12.jpg

画角がまったく違うので、本来は比較できないのだが、メインとなる被写体は同じなので、全体の色傾向を見てほしい。
撮影時のフィルムモードは両方ともNostalgicの彩度、コントラストはそれぞれ-2に設定している。

図0-2. GH1とGH2の比較(FLAT)
02-01-comp-gh12-flat.jpg

図0-2はFLATと呼ばれるスコープで、YC波形の上に重ねて表示させることができる。
AdobeのPremiere Pro CS5の場合は、YC波形の窓の上の「クロマ」にチェックを入れるとFLAT表示ができる。
何をしているかというと、各ピクセルのルーマ(輝度)成分(シアン=水色で表示される)に対応するクロマ(色)成分のふり幅を青で重ねて表示したものだ。
単純にシアンのベースに対応する青の帯の幅が広いほど彩度が高く、狭いほど彩度が低くなっている。
GH1とGH2の違いがよくわかると思う。

図0-3. GH1とGH2の比較(ベクトルスコープ)
02-01-comp-gh12-vs.jpg

さて、前回飛ばしたベクトルスコープがやっと今回日の目を見る。
FLATは全体的な大まかの彩度の傾向を見ることしかできないが、こちらのベクトルスコープは各色別に見ていくことができる点で、彩度の調整にはこちらで詳細を見るほうが適しているのかな。
R、MG、B、CY、G、YLの6つに区切られた円の中にピクセルが分布している。
中心から離れるほど彩度が高くなっていく。
また、グラフの形からも特徴を読み取ることができ、輪郭が円に近いほど、カラーコントラスト(色相差)が低く、ヒトデのように枝分かれして6つの色相にまたがっている方が多色づかいでカラーコントラストが高いと見ることができる。
GH1とGH2では、この絵柄の場合、どちらもカラーコントラスト(色相差)は高いが、GH1の方が各色の彩度がより高いことがわかる。
絵柄によって分布はさまざまだが、少なくともグラフの一部は円の中心を通過しているのが普通であり、そこからいずれかの色相方向に大きく偏っていたりすると、色かぶりを疑った方がいい。

ちなみに、人の肌はIラインと呼ばれる、左斜め上から右斜め下に走るライン上に分布する傾向がある。

さて、彩度の見方をGH1とGH2の比較で学んだところで、改めて今回の宮古島映像を見ていくことにする。
今回のStep 2のテーマは、「メインである被写体」をいかに背景から浮き立たせるか、ということをテーマにおいているので、先ほどざっと思いついた「背景のマホガニー色の壁が派手すぎる」という印象を逆手にとって、被写体自身の持つ高い彩度はそのままに、背景の彩度だけを下げて、彩度差によるコントラストをつけていこうという方向性で考えていく。

【シーン1】

図1-1.オリジナル素材(before)
02-scene01-b.jpg
02-scene01-b-all.jpg

まず、やりたいことは、ビールの金色(色相は黄色)と背景の机と壁のマホガニー色(色相は赤オレンジ)を分離し、背景の彩度を下げて、ビールの彩度を上げることである。

背景もほぼ単色だし、オレンジを下げて黄色を上げるHSL調整(色カーブ)でできそうに思うが、Primaryのみでやろうとしても、黄色が見た目なかなか変化しなかった。
また、オレンジの彩度を下げるだけでなく、金色を目立たせるためにもう少し青みを足す(=明度を下げる)方向でやろうと思うと、今度はHSL調整でルーマを下げる大幅劣化のわなにつかまってしまう。
そこで、面倒だがSecondaryでビールの部分のマスクを切って、その内側と外側に別々の処理をかけることにする。

まずはColorista 2をクリップに適用する。これは@マスクの外側用となる。
Primary調整でAuto Balanceを適用して軽く色かぶりをとった後、SecondaryのKeyに入る。

図1-2. キーによるマスク作成(外側)
02-scene01-c-02.jpg

HueとLumaによるフィルタリングでビールを選んだ後、Invert(反転)した。
なお、マスキングの白黒の見方は、「白:適用される」、「黒:適用されない」である。
これに対して、SecondaryのSaturation(彩度)を-30として下げた。

次に、反対にビールの中身に対する作用を行う。
他のソフト、例えばDavinciResolveやAppleのColorなどでは、一度マスクを切ったらその外側と内側に別々の処理が指定できるようだが、Colorista 2の場合は、一度のキーイングに対して一つの処理しか指定できない。
しかし対処法は簡単だ。
エフェクト(Colorista 2@)をコピーして再度重ねがけし、すでに切られているKeying画面に入って、Invertを元に戻して白黒を逆にし、今度は反対にSecondaryのSaturationを+30に上げた。
これをColorista 2Aマスク内側用とする。
気をつけたいのは、コピーしたせいで、Primaryに対する処理が@と重複してしまうので、AのPrimary処理は全て消す方向で。
チュートリアルによると、各パラメータを元に戻したいときはバーやポインタをダブルクリックすれば元に戻ると言ってるのだが、なぜか私の環境ではこれが効かない。
よって、手動で戻すか、もしくはBypass(この場合はPrimaryのBypass)にチェックを入れて、Primaryに施した調整を無効化する。

図1-3. キーによるマスク作成(内側)
02-scene01-c-03-h.JPG

ここでもう一つColorista 2の小技。
右下の白黒のclipスライダーによって、黒部分または白部分にブラーをかけることができる。図1-3は、この白のスライダーを左に動かすことによって、よりビールの内側に白い部分が増えているのがわかる。これは便利。
カラーコレクションハンドブックによると、キーを作成したときに、特に高圧縮素材でHueまたはSaturationフィルタを使用していると、エッジにエイリアシングによるギザギザが目立つことがある。
これが目立たない程度になめらかにしてやるのがコツだそうだ。
Colorista 2ではSoftnessの数値を0〜2程度上げてやることで実現できる。(やりすぎはマスキング対象のまわりに不自然なハロ現象が発生するので禁物)
キーを切るとき用の素材を別途用意して、そこにクロマ成分にのみブラーをかけた後にキーイングすることでもこのジャギー問題は解決できるようだが、Premiereでクロマ成分にのみブラーをかけたりすることができるのかどうか、まだ不勉強であるので、とりあえずはSoftness調整でいこうと思う。

さて、シーン1に対する処理は9割がた終わった。
後は、冒頭にも少し述べた「白飛び」への対処である。
光が強すぎて、右上の机の反射部分が完全に飛んでしまっているので、基本的にもう手の施しようはない。
ただし、カラーコレクションハンドブックには「露出オーバーに対する可能な応急処置」という項目が設けられている。露出オーバーになってしまった部分のハイライトコントロールをただ下げるだけだと白からグレーになるだけだが、ここに彩度を少し持った色を持たせてやるのだ。
三たびSecondaryキーの出番である。

図1-4. 白飛び部分のキーイング(ルーマフィルタリング)
02-scene01-c-04.jpg

クリップに3つ目のColorista 2を適用する。これをB白飛び対策とする。
Secondaryのキーイングに入る。
飛んでしまっているところは、明度(Lightness)によるフィルタリングが一番理にかなっているし、エッジ品質も良い。
カラーコレクションハンドブックによると、フィルムの白飛びの場合は光のハレーションによるグロー効果が起こるそうで、それほど見栄えも悪くないそうな。よって、このグロー効果を模すために通常よりも大きくSoftnessをかけてマスキングのエッジを大きくぼかす。

図1-4にキーによるマスキングの結果を示した。
しかし、ここで、私はこう考えた。机の反射とビールのグラスの反射では、望ましい色が違うし、違う色にした方が自然じゃないか?と
机の反射には午後の暖かい金色の光を与え、でもビールのグラスは硬質な白い光をまとわせる。ビールはきんきんに冷えた感じがおいしそうだし。

これを実現するにはどうすればいいか。
図1-4のマスク結果を見ると、水色枠で囲まれた部分(ビールのグラスの反射)にも白がかかってしまっている。
これをマスクから取り除く方法が、パワーマスク(シェイプ)機能である。

図1-5. パワーマスクの併用によるキーイング結果のアレンジ
02-scene01-c-05.jpg

パワーマスクとは、フレームの中に任意のシェイプ(Colorista 2の場合は楕円形か矩形)をマスク領域として描く機能のことである。
ここでは、ビールグラスの形にマスクを作成し、Keyのモードを「Key minus power mask」つまりキー領域からパワーマスク領域を除いた。
(図1-5.ではパワーマスクのView Modeを「Show Mask」にして白黒のマスク領域を見せている図になっている)

ひらめきメモひらめき
ちなみに、Keyのモードには他にもいろいろあって、キー領域とパワーマスク領域の重なったところだけを処理する、キー領域にパワーマスク領域を加える、等いろいろなことができる。
もちろん、キーと組み合わせなくても、パワーマスク単体でマスキングすることもできる。
ただし、Colorista 2の場合はトラッキング機能を単体では持たないので、被写体が大きく動いた場合は手動でマスクの形を追随させるように変えるキーポイントを打っていかないといけない。これは非現実的だ。
AEで使えばこの問題も解決するようだが、私はPremiereベースなのでこれはあきらめるしかない。

話を戻して。
これで、机の光の反射の白飛び部分だけが選択された状態になっているので、ここでSecondary 3-wayのハイライト/ゲインコントロールでイエローオレンジの温かみのある色を少し加えた。
ビールのグラスの部分にはこれは適用されないので、白く残ったままである。

図1-6. シーン1完成(beforeーafter)
02-scene01-comp-ba.jpg
02-scene01-comp-all.jpg

FLATとベクトルスコープに注目。
FLATでは、左のマホガニー色の壁と右下の机の木の色の彩度が下がったのがはっきり見てとれる。
また、ベクトルスコープでも赤みの彩度が減って、黄色の彩度が増しているのがわかる。
よりシックな映像だけど、ビールの色がおいしそうに目立つようになったと思う。

【シーン2】

図2-1. オリジナル素材(befre)
02-scene02-b.jpg
02-scene02-b-all.jpg

例によって背景のマホガニー色の彩度を下げたい。
まずはSecondaryによるキーイングを試みた。

図2-2. 壁のキーイング トライ1
02-scene02-c-01.jpg

ところが、どうがんばってもここまでしか選べない。
画面左半分の壁はほぼ選ばれている。が、人物の顔の一部もマスク領域に含まれてしまっている。
よって、パワーマスクを併用することにした。

図2-3. キーイング結果から人物部分を除くパワーマスクを作成
02-scene02-c-02.jpg

パワーマスクを人物のところに設定し、「Key minus power mask」に設定することで人物部分を適用除外させた上で、SecondaryのSaturationを-40に落とした。
ここまではシーン1と同じだ。
しかし、これでは画面右半分の壁の部分がまったくマスクされない状態で残ってしまっており、ここの彩度を落とすことができない。
Colorista 2の重ねがけという荒業に出てもいいのだが、そうしなくても、まだ対処法が残されている。
Colorista 2内部では、キーイング1個につき、パワーマスクは2個まで設定することができるのだ。
それが、Masterタブの中のパワーマスクである。

図2-4. パワーマスク(Master)
02-scene02-c-03.jpg

Masterタブの中にあるパワーマスクで画面右半分の壁を覆うように設定した。
そして、Master Mask Modeを「Add to Secondary」に設定した。
このときは、Masterでの色補正は一切指示しないことがポイント。
これによって、純粋にセカンダリの設定(彩度-40)をMasterで指定したパワーマスク部分に適用させることができる。

図2-5. 最終的なマスク結果の図示化
02-scene02-c-04.jpg

図2-5は、photoshopでSecondaryとMasterでの最終的なマスキング結果を重ね合わせて図示したものである。
(切り抜きで微妙に合わなくてふちに黒いのが残ってたり、このあたりは素人ゆえご笑覧ください)
この白い部分に対応する部分の彩度が下げられたわけである。

ひらめきメモひらめき
Secondaryの場合と同じく、Masterのパワーマスクもモードがいろいろ準備されていて、今回の「add to」のように純粋にセカンダリーの拡張として使う以外にも、Masterに設定した色補正項目をパワーマスク部分に調整したり、それとSecondaryの結果をMixしたり、いろいろできる。
が、ここは概念的に説明できるほどまだ理解できていないため、とにかくもう少し触ってみて実地で理解するしかない。

図2-6. シーン2完成(beforeーafter)
02-scene02-comp-ba.jpg
02-scene02-comp-all.jpg

【シーン3】

図3-1. シーン3完成(beforeーafter)
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02-scene03-comp-all.jpg

【シーン4】

図4-1. シーン4完成(beforeーafter)
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02-scene04-comp-all.jpg

【シーン5】

図5-1. シーン5完成(beforeーafter)
02-scene05-comp-ba.jpg
02-scene05-comp-all.jpg

【シーン6】

図6-1. シーン6完成(beforeーafter)
02-scene06-comp-ba.jpg
02-scene06-comp-all.jpg

【シーン7】

図7-1. オリジナル素材(before)
02-scene07-b.jpg
02-scene07-b-all.jpg

最後のシーン7は、他とは少し毛色の違う、風景映像である。
それまでは白飛びするくらい日が差していたのだが、風景を撮るときにかぎって曇ってきた。
幸い青空は残っており、映ってはいないが太陽だけがうっすらと雲に隠れている状態だと思われる。
これを、なんとか日差しの下で撮影したような映像に見せたいという意図をもった。

まずは、Primaryで彩度を上げ、記憶色表現を試みた。

図7-2. Primary調整
02-scene07-c-01.JPG

3-wayのAuto Balanceで色をニュートラルに近づけて、全体の彩度を10%上げた。
後は絵を見ながら、HSL調整(色カーブ)で、黄色い花の彩度を上げ、空と海のBとCyの彩度を上げ、少し明度を下げて深みを出した。逆に、緑は少し彩度を戻した。
彩度が増したことで、太陽の光の強さ(光源は映っていないが)に照らされた感じを表現した。

ただ、これだけでは不自然だ。
窓の内側のテーブルへの映り込みの色が寒すぎる。
太陽が差しているなら、もう少しあたたかみのある光り方をするだろう。

ここで使ったのが次の図7-3のようなマスキングである。

図7-3. テーブルへのパワーマスク
02-scene07-c-02.JPG

(今度はSecondaryのパワーマスクのview modeを「show red overlay」にして実写映像と重ねてみた。)
ちょうど、光が差していると思われる、室内のテーブルから屋外の白いテーブルセットのあたりまでを帯状に矩形で選択した。
そして、まずは中間調でオレンジを足した。これは屋外の白いテーブルセットと同じ位置にある植物への光の色に影響している。
次に、室内のテーブルへの反射だが、こちらはおそらく角度的に空の色を反射していると思われるので、あまりオレンジにしてしまうと不自然になる。よって中間調よりはオレンジを控えめにした。
最後に、光の強さを表現するために、ハイライト/ゲインを少し上げた。これによって室内のテーブルの反射が強くなった。

図7-4. シーン7完成(beforeーafter)
02-scene07-comp-ba.jpg
02-scene07-comp-all.jpg

このシーン7のようなのは、やっていて楽しい。
光に対する観察力、感覚の記憶を最大限に発揮しながら、色を載せていく作業。

さぁ、ここまでで十分なようにも思う。
Primaryで色を整え、Secondaryで画面から被写体を浮かび上がらせた。
ちなみに、今回はあえてマホガニー色の壁の彩度を下げて人物の彩度を保ち、そこに控えめなコントラストを出すようにした。
だが、オリジナルのつやのあるマホガニー色の壁はそれはそれで生き生きした映像であるようにも思う。
どういう方向性で映像に「力」や「ムード」を与えていくか。
特別な色を使わなくても被写体を際立たせることを考えてSecondaryをうまく使うことでこんなにも表現ができる。
私にとっては、このStep2の過程が今けっこう楽しい。

さて、次回はいよいよStep3の"Look"の作成。
posted by そよはっは at 23:01| Comment(0) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

Grading Training その1

カラーコレクションハンドブック
を読んで非常に感動し、グレーディングに対する情熱がわいてきたので、勉強したことを久々にメモしていくことにする。

素材はLumix GH1のAVCHD(H264)であるので、高圧縮素材(4:2:0)である。
これをRed Giants社のColorista 2でグレーディングする。
1.全体的な明度・色・コントラストのバランスを補正する。
2.被写体と背景の区別をつけ、際立たせる。
3."Look"を与える
という手順で行っていこうと思う。

まずは、Step1として、「映像の色を判断し、正しい状態に補正する」というところまで。

Grading Training Log from "Color Correction HandBook"; Step 1 from soyoharu on Vimeo.



Step 1の学びポイントは
*ベクトルスコープ、YC波形(ルーマ波形)、RGBパレードスコープの見方
*3-way(リフト/シャドウ、ガンマ/中間調、ゲイン/ハイライト)の調整方法
*HSL調整(色カーブ)機能の使い方と注意点
*セカンダリーキーを使ってみる
の4点である。

クリップは全部で6個。
宮古島のドライブ映像で、晴天で気持ちのいい日だ。
絵のポイントとなるのは、青空、入道雲、植物の緑、灰色のアスファルト、赤土あたりだろう。
惜しいのは、素材は全て窓ガラス越しに撮影されていて、おかしな色かぶりになってしまっている。
これを補正していく。

【シーン1】

図1-1. オリジナル素材(before)
01-scene01-b.jpg

まず、素材の状態を各種カラースコープで分析するところから始める。
例えば私が使っているのはpremiere pro CS5だが、タイムラインプレビュー画面をコンポジット映像(見たままの映像)から各種スコープに切り替えるボタンがついている。
(「カラー補正」ワークスペースに切り替えると、下部に常時表示できる。)
ヒストグラムとはまた一風ちがった、独特の見た目がとっつきにくく、0(黒)−100(白)くらいの大雑把なところしか勉強前はわからなかった。
「カラースコープ、なにそれうまいの?」的な宝の持ち腐れ状態。
が、カラーコレクションハンドブックはこの見方から詳しく説明してくれている。

まずは、YC波形(ルーマ波形)から見ていこう。

図1-2.YC波形の見方
01-scene01-comp-howt_yc.jpg

映像の成分はYcCbCrのYc(ルーマ)=明暗と、CbCr(クロマ)=色に分けられる。
YC波形スコープはこのルーマ(輝度)成分の分布を見るものだ。
映像の各フレームの水平方向(1920)とYC波形スコープの水平方向の各位置(ピクセル列)は対応している。(図1-2の赤枠で囲った列)
フレームの赤枠内の各ピクセル成分を取り出して、一番暗いものから明るいものへと積み上げていった結果を表示しているわけだ。
だから、例えば赤枠の位置にある映像を見るに、一番明るい雲の白い部分(黄色枠)と一番暗い植物の茂みの部分(水色枠)がスコープ上のどこにあるかを見る。
これにより、その他の各中間調の部分もこの位置だなと推測できる。

このシーン1では、映像の一番暗い植物の茂み部分はIRE0〜10の範囲内にあり、シャドウはつぶれもなく明るすぎることもなく、適切に収まっていることがわかる。
ただし、雲の白い部分がIRE90のところにとどまっており、晴れの日の宮古島ということを考えると、もう少しハイライトを明るくしてしゃっきりさせたいところである。

次に、RGBパレードスコープの見方

図1-3. RGBパレードスコープの見方
01-scene01-comp-howt_rgb.jpg

一方こちらは映像のクロマ成分(色相)のバランスを見ることができる。
各ピクセルをR(赤)、G(緑)、B(青)の成分にわけて抽出し、あとはYC波形の要領で、映像の水平位置を合わせて分布させている。
YC波形と違って、ぎゅっと水平方向に圧縮されて無理やり3個分を押し込んでいるので、ちょっと見難いが、原理は同じである。

見方としては、映像の右上にある雲に注目してみよう。
この雲の一番明るい部分は、本来色かぶりのない白〜グレー(彩度0に近い)であると仮定しよう。
(実際は黄色がかったり、青みがかったり、赤みがかったり、天候や時間帯によってさまざまだが、今は晴天の真昼間なので、無彩色であるとする)
この場合、RGBパレードの各成分の同じく右上の方を見ると、色かぶりがない状態というのは、このあるべき部分において、RとGとBがそれぞれ同程度の数値になるということである。
ところが、このシーン1の例ではRGB同士を比較したときに、Rが少ない(低い位置にある)のがわかると思う。つまり、やや青〜緑の色かぶりが発生しているということがわかる。

次に、ベクトルスコープ。
と行きたいのだが、今回の例ではあまりベクトルスコープが役立つ場面がないので、次回のStep2に解説はまわすことにする。

さて、カラースコープを使った素材の分析で、修正の方向性が見えてきたところで、
これらの問題点を補正するのが、Colorista 2などのグレーディングソフトの出番である。
グレーディングソフトには、今無料になって話題のDavinciResolveや、最近でたadobeのSpeedGradeなどさまざまなものがあるが、私はとりあえず中でも安価で敷居が低く、Premiere内部でプラグインとして手軽に使えるColorista 2を使う。
(将来的に、何ができるかできないかをちゃんと見極めた上で上位ソフトに移るかもしれないし、ひょっとしたらこれで十分と思うかもしれない・・・未定)
ちなみに、カラーコレクションハンドブックの著者Alexis先生がさすがプロであると感心させられる所以は、単なるソフト手順解説にとどまらず、映像を補正するときに、何をどうしたいかということがまずあって、そのために、Aというソフトではこうする、Bというソフトではこちらの機能で同じことができる(またはできない)、というのをちゃんと書いてくれているところである。

グレーディングの過程は、冒頭に書いた
1.整える
2.被写体を際立たせる
3.全体的な色合いを変える
の3工程であるが、Colorista 2では大まかにこれに沿って
*Primary
*Secondary
*Master
の3つのタブに分かれている。
ただし、実際には1の工程の時点でSecondaryのキーやパワーマスク、またMasterのパワーマスクを使うこともあるし、Primaryを使わずにいきなりSecondaryから入る場面もあるだろう。
できることとしては
*Primary
映像の全体に対しての調整項目
*Secondary
キーやパワーマスクで映像の一部を任意に切り出して調整を加える
*Master
Primary、Secondaryが終わった後の、全体的な色調整項目(カーブ含)
※パワーマスクがこのMasterにもついており、Secondary的な使い方をすることもできる。

と、全体的な説明が終わったところで、話をシーン1に戻そう。

まずはコントラスト補正から始める。
シーン1のコントラスト上(ルーマ)の問題点は、ハイライトが足りないことにある。
なので、まずはPrimaryの3-wayを調整する。

図1-4. 3-wayコントロール
01-scene01-c-01.JPG

この3つのカラフルな円は、左からシャドウ(リフト)、中間調(ガンマ)、ハイライト(ゲイン)をそれぞれ調整するものだ。
理論的には、シャドウ(リフト)はYC波形の一番下の部分のみ、ハイライト(ゲイン)はYC波形の一番上の部分のみ、中間調(ガンマ)はその中間のみを選択的にコントロールすることができる。
ただし、実際にはシャドウを動かすと中間調もそれに合わせて若干上がってしまうし、ハイライトはその逆の現象が起こる。
なので、ハイライトを上げた後、中間調を戻す、など組み合わせて使うことが多い。

3-wayというのは、この3つについて、それぞれHSL(色、彩度、輝度)を調整できるようになっている。
Colorista 2の場合は、一番外側の円の右についている白黒のグラフに沿って黒い短いバーを動かすことで輝度を調整し、中間の円の中心にある丸いポインタを各色方向にドラッグすることで色相を変化させ、一番外側の円の左についている白い短いバーの上げ下げで彩度をコントロールすることができる。

シーン1のコントラスト補正を行う方法として、まずは図1-4のようにハイライトの輝度を上げた。
目安はYC波形の変化を見ながら、雲の一番白い部分が100の手前までくるようにした。

図1-5. コントラスト補正によるYC波形の変化(シーン1)
01-scene01-comp-yc.jpg

次に、シーン1のカラーバランスの補正に移る。
やることは、3-wayの各ホイールの真ん中の色相をつかさどるポインタを使って色相を変化させる(この場合は赤みを増やす)ことだが、これを自動でやってくれる機能がある。

図1-6. Auto Balance
01-scene01-c-02-.JPG

Auto Balanceにはカラーピッカーがついていて、これで無彩色にしたい部分をクリックする(図1-6では黄色枠の雲の部分)ことで、自動で3-wayのポインタを移動させてくれるのだ。
(このあたり、上位ソフトだと、シャドウ、ミッド、ハイライト別々に補正できるようだが、Colorista 2はいさぎよく一発仕上げになってしまう)
これであたりをつけて、あとは自分で3-wayをいじればよい。

図1-7. カラーバランス補正(3-way)によるRGBパレードの変化
01-scene01-comp-rgb.jpg

で、仕上がりがこちら

図1-8. beforeーafter
01-scene01-comp-ba.jpg

色かぶりがとれて抜けがよくなった。
もっと彩度を上げたりコントラストを上げたりすることもできるが、かなり控えめに最低限の味付けにしてある。
(このあとMaster工程等で色を変えていくことを見越して)

ひらめきメモひらめき
3-wayによる調整と、写真補正の世界ではおなじみの「カーブ」による調整とどちらがいいのか?
という問題についてもカラーコレクションハンドブックでは明確に答えてくれている。
「どちらでも。速いほうでかまいません」
ただし、カーブの方がより細かくポイントを打ったりして調整項目が多いため、これからやるならカーブで慣れていてもいいかな?と記されている。

また、after(調整を加えた後)の各スコープの波形に入る横じまは、明確に画像劣化を表しており、4:2:0の高圧縮素材と4:4:4の素材(RAWとか)ではこの部分が明確に違うのだそう。

【シーン2】

図2-1.beforeーafter
01-scene02-comp-ba.jpg

ここでは、Primaryで全体的なコントラスト補正を行い、ハイライトを上げて全体の抜けを良くした。
ただし、そのことによって、青空の深みが少し薄れてしまったように感じた。
このシーン2の映像全体を見渡したときに、青い部分は空しかない。
こういうときは、HSL調整(色カーブ)機能が便利だ。

図2-2.HSL調整(色カーブ)
01-scene02-c-01.JPG

8つの色相のポインタを持つ円が2つ。
左の円は彩度調整、右の円は明度調整を行うものである。
各ポインタをドラッグして、円の外側または内側にドラッグすることで、その映像の中のその色の部分だけの彩度・明度を上下させることができる。
今回のシーン2の場合は、青(濃い方)のポインタについて、左の彩度の円では外側(彩度が高くなる)に、右の明度の円では内側(暗くなる)に動かしている。
ちなみに、各ポインタを隣り合う別の色の方向に移動させることで(円周方向)、色相を変えることもできる。例えば、青をシアン(水色)っぽくふったり、紫方向にふったりすることもできる。

ここで、カラーコレクションに載っていた非常に有用な方法がある。
HSL調整の右の円で色のルーマ成分を大きく上下させることは、特に高圧縮素材(4:2:0)の場合は非常に危険なのだそうである。

図2-3. HSL調整で青の明度を大きく下げると・・・
01-scene02-comp-bad-luma-down.jpg

私の今までの常識からいくと、明度を下げる場合には、上げる場合に比べて劣化は目立たない、という思い込みがあったのだが、そういうことでもないらしい。

【シーン3】

図3-1. beforeーafter
01-scene03-comp-ba.jpg

【シーン4】

図4-1. beforeーafter
01-scene04-comp-ba.jpg

【シーン5】

図5-1. beforeーafter
01-scene05-comp-ba.jpg

【シーン6】

図6-1. オリジナル素材(before)
01-scene06-b.jpg

さて、最後のこのシーン。私の一番お気に入りのシーン。
元素材をぱっと見た印象も、それほど悪いものではない。

図6-2. シーン6 YC波形
01-scene06-b-yc.jpg

もともとコントラストは十分で、シャドウの締まりもハイライトの抜けも良い。

図6-3. シーン6 RGBパレード
01-scene06-b-rgb.jpg

画像のうち下半分を占めている灰色のアスファルトの部分がわりと高輝度な部分だが、ここのバランスが崩れている(例の青緑かぶり)のがわかる。

この状態を私なりに分析した結果はこうだ。
コントラスト補正は必要なく、道路部分のみの色かぶりをとりたい。
空はこのままで十分きれいだ。さわりたくない。

とすると、先ほどのシーン2とは逆の発想になる。
空「以外の部分」だけに調整を加えたい。
ところが、空「以外」には何があるかと言うと、緑の植物と黄色と白のライン、グレーのアスファルトと車のダッシュボード、さまざまな色が混在している・・・ということは、先ほどのHSL調整では対応できそうにない。

ということで、Secondaryの出番となる。

図6-4. Secondary Key
01-scene06-c-01.JPG

ある特定の色範囲を持つピクセルを自動で抜き出してマスキングするのが、このSecondaryのKeyの役割だ。
そういう意味でHSL調整(色カーブ)と同じだが、よりカスタマイズ可能で、さらには「invert」(マスキング効果の反転)ができるのが大きい。
Colorista 2での使い方はこちらのビデオが詳しいので詳細は割愛する。
ここでは、カラーコレクションからの情報に基づいた今回のポイントを載せる。
図6-4のダイアログの右上に「Hue」「Saturation」「Lightness」の3つのポッチがついており、これにより、カラーピッキングにフィルターをかけることができる。
例えば今回の場合だと、青空「以外」を選択したいので、「Hue」(色相)が一番特徴的で効果的なマスキングになりそうだ。まずHueのポッチのみにフィルタリングしてから、青空の部分を抜き出し、さらにはそれを「Invert」(反転)するわけである。

図6-5. Keyでマスキングした部分へのSecondaryでの3-way調整
01-scene06-c-02.JPG

中間調の部分の赤みが足りないのを足している。

図6-6. beforeーafter
01-scene06-comp-ba.jpg

青空の部分はまったく色が変わらず、植物〜アスファルトの部分のみちょうどよい色バランスになった。

ちなみに、カラーコレクションハンドブックからの情報だが、緑の記憶色(実際にどのように見えたかではなく、人が連想し期待するその対象物の色)は、彩度が高すぎない方が高感度が高いそうである。
また、補色対比ともいうように、空の「青」に対して、それ以外の部分を補色方向の「オレンジ」に振っているので、よりコントラストが高まる効果が得られるということも解説されている。
非常に奥が深い本である。

さぁ、これで余計な色かぶりがとれた。
次項では、Step2 「被写体を際立たせる」に進む。
posted by そよはっは at 12:56| Comment(5) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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